ご挨拶

 

 日常生活の中での気づきや感想を、五・七・五の俳句の手法で表現しました。俳句作りには、季語の約束がありますが、私はストレートな表現が好きなので季語の入らない短句も含まれます。

 毎月初め、私の句をウェブサイトに投稿する予定です。自己流で作った句集ですが、どうぞご覧ください。

 

                            中嶋 徳三  

六 月


1.  紫陽花

  

紫陽花

             そら

山寺の紫陽花の宙しづかなり

 

 

 

紫陽花の碧ビー玉に見つけたり

 

 

 二日前の俳句原稿では紫陽花の「宙」は「円(えん)」でした。新聞に「宙」の字を見つけて気に入り、急遽変更しました。句作りには言葉選びの遊びがありますね。


2.  茅の輪

  

黄色のバラ

右左廻り違えた茅の輪かな

 

 

 

カード失せ呪い愁ふや吾傘寿

 

 

 マイナンバーカードの更新連絡がきました。マイナカードは使わないので、カードを探すのに一苦労。更新手続きでは、新しく4つの暗証番号を要求され、これを全部覚えるのは無理。


3.  ちらし弁当

  

葉桜

春野ゆくちらし弁当花盛り

 

 

 

「ロック・ユー」老いたこころに団扇風

 

 

 久しぶりに、クイーンの「ウイー・ウイル・ロック・ユー」の曲を聴きました。八十路過ぎの老体のこころの中に、一陣の爽やかな春風が吹き込んで来たようでした。


4.  梅雨入り

  

葉っぱの上の雨粒

声すれど傘のみがゆく梅雨の入り

 

 

 

偏屈と書きて我が顔浮かびけり

 

 

 雨の中、垣根越しに子供の話し声が聞こえます。ちょうど学校の下校の時間です。でも、話し声だけで子供たちの姿は見えません。垣根の上を小ぶりの傘が二つ流れていきました。


5.  衣替え

  

夜の月

衣替え世はひとにつれ臍を出す

 

 

 

人の世の深淵見た顔キリギリス

 

 

 極端な短スカート、臍丸出しやお人形のような服装、年寄りには若い女性の姿についていけません。そういえば、昔に番長スタイルが流行り、校門前で先生がスカートの丈を上げるように注意してました。時代は変わらずですか。


五 月


1.  葉 桜

  

葉桜

葉ざくらを好ましと思ふ齢かな

 

 

 

葉桜にわが散り様を学びたり

 

 

 今年も桜の花見を楽しみました。老齢になったせいか、満開の桜よりも葉桜の方により趣があるように思えます。年齢によって物の見方や嗜好が変わるものですね。


2.  木瓜の花

  

木瓜の花

艶かな木瓜の花には棘がある

 

 

 

木瓜の花その棘がまあ痛いのよ

 

 

 妖艶な木瓜の花が好きです。この花を見てると、以前の職場の同僚仲間と通った新橋のバーのママを思い出します。やり手のママで、いつもやり込められていました。


.  チューリップ

  

チューリップ

チューリップ一本足立ち微笑みぬ

 

 

 

愛想無しでもどんな娘も華やかや

 

 

 小さい頃の女の子が一時期、人見知りをして難しくなる時があります。でも、その愛想無しの娘(こ)のちょっとした仕草や姿が可愛らしく、とても華やかです。


4.  燕飛ぶ

  

春の湖と風景

筑波嶺や青田の上を燕飛ぶ

 

 

 

素足ゆく足の裏にも春は来た

 

 

 若葉が輝き風薫る春爛漫の時節になりました。私は花粉症で、泪、鼻水、くしゃみなどの辛い時期と重なるのですが、すべてのものが輝やく春の季節は素敵です。


5.  ブナ林

  

桜の花咲く風景

「笑ってね」婆が爺撮る桜かな

 

 

 

ブナ林躑躅をそっと包み込み

 

 

 老夫妻が、満開の桜の下で写真を撮っていました。奥さんが「笑ってね」と言ったので、ご主人の遺影写真なんだと思いました。後で、私のこの邪推を恥ずかしく思いました。例え、本当の話であっても・・。


四 月


1.  桃の花

  

春の花

マシュマロの赤子の頬や桃の花

 

 

 

桃の花今宵の酒は盃にしよ

 

 

 桃の花が花屋の店先に飾られて「春ですよ」と行き交う人に声をかけています。マシュマロのような赤子の頬もとても初々しく、ちょっと触ってみたくなります。


2.  春 雷

  

春の神鳴

春雷は天の怒りか否祝歌

 

 

 

大鷺は湖面を叩き宙に浮く

 

 

 湖に浮かぶ大さぎが、羽ばたきを始めました。でも、すぐには飛び上がれず、大羽で2回、3回と湖面を叩き、ようやく飛び上がりました。とても豪快な姿でした。


3.  春の萌え

  

桜の花

昨日より今日より今よ春の萌え

 

 

 

雨上り庭の草摘む二つ三つ

 

 

 春の萌えの時節、毎年見慣れているはずの芽吹きと新緑に見とれました。若い頃、このように新緑を観た記憶はありません。きっと年をとったからでしょうか。


4.  青春賛歌

  

ミモザ咲く

ミモザ咲き青春賛歌口ずさむ

 

 

 

ハンドクリーム顔にのばせば風戦ぐ

 

 

 晴れた日、顔が乾燥肌になりました。洗面台に置いてあるハンドクリームを顔につけたら潤いがでました。やっぱり、顔のクリームは、ハンドクリームに限りますね。


5.  桜

  

桜の花

定めなく散り舞ふ桜わが身かな

 

 

 

姥ざくら趣あるぞと言い聞かせ

 

 

 お年寄りのための体操が写真入りで新聞に載っていました。説明には、「まず浮気を意識しましょう」。「えっ、体操するのに昔の浮気を思い出せというの・・」。スミマセン。「まず呼気を意識しましょう」の間違いでした。あ~ビックリした。


三 月


1.  春は来た

  

デパートのショーウインド

飾り窓デパートに先ず春は来た

 

 

 

世話なりし手袋ぽい捨て春になる

 

 

 デパートのショウウインドーが春の飾り付けになりました。春とは名ばかりで、少し早過ぎるように思うのですが、春の準備をしなさいとのメッセージでしょう。


2.  寒 椿

  

寒椿の花

闇路ゆく垣根に沿ふて寒椿

 

 

 

浅き春牡丹の赤芽空を向く

 

 

 寒くはありますが、日脚が少しづつ伸び春が近いのを実感できます。わが家の鉢植えの牡丹の枝には5つの新芽が付きました。その新芽はみな空を向いています。


3.  雪の舞

  

雪降り

街灯のひかりとダンス雪の舞

 

 

 

美しきひと夜目遠目マスク哉

 

 

 昔に比べると雪の降るのが少なくなりました。先日、東京にも久しぶりに雪が降り道路や庭が白くなりました。夜の街灯のひかりの中、雪はダンスを踊っていました。


4.  初黄蝶

  

小さな草の花

初黄蝶春よ春よと飛跳ねる

 

 

 

君の名は問えど応えぬ草の花

 

 

 今年初めての黄蝶が、わが家の小さな庭に飛んできました。これを見て、私はわが家が春になったのを宣言しました。黄蝶は忙しそうに垣根を飛び越えていきました。


5.  日向ぼこ

  

お年寄り人形

日向ぼこ私も祖母の歳になり

 

 

 

どうしたの猫目問いたる日永かな

 

 

 私と家猫は、ガラス戸越しの日溜りにいました。図書館から借りた本の返却日は何時だったかなと考えていたら、家猫は「どうしたの?」と私をちらり覗き見ました。


二 月


1.  葉の芽

  

雪の朝

春よ来い雪に葉の芽が歌唄い

 

 

 

赤芽立つ春の近きを知りており

 

 

 まだ寒い日が続きますが、垣根の木々に葉の芽が付きました。木々たちはもう春が近いことを知っているのでしょうね。私は、寒いので今晩は熱燗と思っているのですが・・・。


2.  沈丁花

  

ガラス玉

沈丁花闇夜の中のかくれんぼ

 

 

 

われ傘寿蝋梅の歳に届かざり

 

 

 夜の帰宅の途中に、沈丁花の甘い香りがしました。あたりを見回しましたが暗くてどこで咲いているか分かりません。闇夜の中で、沈丁花とかくれんぼをしているみたいでした。


3.  無事是貴人

  

酒器と猪口

八十寿なら無事是貴人日向燗

 

 

 

ともかくも今日も終りて手酌酒

 

 

 同年配の知人は、一日を無事過ごすことを心掛けるといいます。同感です。そこで今晩の晩酌は熱燗でなく日向燗(ぬる燗)にします。火傷でもすると無事是貴人ではなくなりますから。


4.  冬籠り

  

達磨さん

冬籠り夜窓に映る老いた顔

 

 

 

チョコレート最中とどちら先食べる

 

 

 食卓の上にあるチョコと最中のどちらを先に食べるか。西洋文化を味わった後に東洋文化を味わう、またはその逆?この社会文化選択の決定はかなり難しい問題です。


5.  黄泉の国

  

お地蔵さん

黄泉の国そんなに良いか又ひとり

 

 

 

歳時記を冬から春に替え置きぬ

 

 

 元同僚が亡くなりました。私よりもずっと若くて優秀で、まだまだ活躍されると思っていました。黄泉の国に渡るのが少し早過ぎると思うのですが、これも人の定めでしょうか。